AIを実現するための技術の1つである機械学習は、入力と出力の例を繰り返し与えることでルールを学習し、未知の入力に対してもある程度の確率で意味のある出力を返すことができるのが特長です。機械学習はデザイナーが学ぶ過程に似ているといえるかもしれません。なぜなら、多くのデザイナーは、入力として様々な制約条件を与えられ、最適と思われる解を出力し、人々からフィードバックを受けることを繰り返し経験することで自身の中にルールを生成するからです。もし、デザイナーに自分の分身としてのAIがいたらどうなるでしょうか?
「Room 1」は、あるデザイナーの、ある時点の、ある制約条件における家具の配置案を、機械学習の手法の1つであるディープラーニングにより学習した「AI」とVR空間内で対話する体験型展示です。体験者がヘッドマウントディスプレイ(HMD)を装着し、家具に見立てた2つの実物大モデルを空間内に配置すると、それらを入力として動的にその他5つの家具の配置が決まります。入力となる家具の配置により、デザイナーの配置案の再現となることもあれば、元の配置案とは大きく異なりながらもどこかにデザイナーの意図を感じられる配置になることもあります。
デザイナーにとって、自分が言語化していないルールに基く「AI」の出力はreflectionとなります。体験者による想定外の入力に対する「AI」の出力から、希に生まれる成功例によって刺激を受けるだけでなく、試行の大部分を占める失敗例に自らのルールの片鱗を読み取ることによって、デザイナーは新たなreflectionを生み出すことでしょう。
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