岐阜イノベーション工房2020 参加者欧洲杯比赛投注_欧洲杯外围app-竞猜|官网 第1回:羽島企画「現場からはじめる、地に足の着いたDX(デジタルトランスフォーメーション)」
岐阜イノベーション工房は、アート、デザイン、工学、社会科学など、多様な分野の教員と学生が切磋琢磨するIAMASという環境で醸成された手法のうち、イノベーション創出に有効だと考えられるものを短期集中で学ぶプログラムです。プログラムの前半では、主催者が演習用に設定した課題に取り組むことを通じて、いくつかの重要な手法を学びます。後半では、前半での学びと経験を基に、それぞれの組織における実際の課題に取り組みます。
今回より3回に渡り、2020年度の参加者を対象に実施したインタビューを紹介していきます。第1回では、介護トータルケアサービス、子育て支援などの事業を展開している株式会社羽島企画(岐阜県羽島市)の小森絢子さん、北川一樹さん、岩下留美さんにお話を伺いました。
なお、昨年度までの取り組みについてまとめた小冊子を配布しております。このプログラムで学べる手法など、詳細について知りたい方はぜひご覧ください。
https://note.com/_kotobuki_/n/n355b205b8e91
第1回:羽島企画「現場からはじめる、地に足の着いたDX(デジタルトランスフォーメーション)」
第2回:株式会社林本店「“100年先のスタンダード”を考え 酒造りの新たな可能性を探索」
第3回:太平洋工業「新たな手法?ツール活用を通して 社内へ波及していくイノベーション活動」
企業の未来を担う若手が大抜擢
- 岐阜イノベーション工房に参加したきっかけは?
小森 私たち株式会社羽島企画は、介護や医療、子育て支援や障がい者支援など、福祉を中心に、365日24時間安心を提供する「トータルケア」をテーマにした総合福祉グループです。
今回は、新しい知識や考え方を吸収し、それを現場へと導入していきたいと考え、岐阜イノベーション工房に参加しました。
ただ、私たち3人は部署も年齢も違うメンバーで、接点もあまりありませんでした。今回は、上層部で岐阜イノベーション工房への参加が決まり、若手である我々3人が選ばれてチームを組んで参加したという経緯です。
岩下 参加が決定してから、岐阜イノベーション工房のパンフレットを読んだり、動画を見たりして「どんなことをやるんだろう」と考えてみたのですが、私には未知の領域すぎて、あまりイメージが湧きませんでした。
正直、始まるまで「どんなことをやるんだろう」とドキドキしていた感じです。
北川 参加前は、セミナー形式かと思っていました。パンフレットを読みながら「羽島企画としてのゴールはどこにあるんだろう」と黙々と考えていましたが、結局わからないまま飛び込むことになりました(笑)。不安もありましたが、期待も大きかったです。
- 実際に参加してみて感じたことは?
小森 演習プログラムは、その手法も、使うツールも、ほとんど初めて知ることばかりで、驚きや発見がある中で、毎回ついていくのに必死でした。
北川 わからないなりにも一生懸命こなしていく中で、少しずつ理解できることもありました。座学ではなく、実践的に学べたのも良かったと思います。
難しい内容も多かったのですが、いただいた資料がとてもわかりやすかったので、理解しながら進めることができました。
- 実際に演習プログラムを進めるなかで、どんな学びがありましたか。
小森 フィールドワークの観察では、今まで自分が知っていた「観察」の概念が覆りました。「そんなところまで見るんだ…!」と、驚きの連続でした。
その人の動きだけじゃなくて、持ち物や、目線の先まで、思ってもみないところまでじっくり「観察」することに、驚いたと同時に、発見もありました。
北川 観察しながら一生懸命メモを取っていたんですけど、いざまとめようとすると、メモには重要なことが書かれていなくて…。意外と空っぽな観察してたんだな、と(笑)。
「観察する」ことの解像度が上がった経験でした。
- 今回の成果について教えてください。
小森 まずはどんなことに取り組むかを決めるため、1週間、社内にどんな困りごとがあるのかを観察しながら業務にあたりました。1週間後、3人で話し合って決まったのが「介護施設での利用者様の記録を、異なる様式に複数回転記する現状を改善したい」という課題でした。
岩下 私は今、介護事業部に属しているのですが、現場スタッフとのやりとりの中で、利用者さんの記録を、異なる様式の紙に手書きで転記する作業が負担になっていると聞きました。
記録用紙は必要なものばかりで、廃止は不可能。でも複数の紙をひとつの様式にまとめるのも難しく、結果、転記が何度も発生しているという現状。当日中に書くものが多いため、日々の業務を圧迫し、時には残業の原因にもなっていました。
そこで「記録?転記の負担を少なくするためのシステム開発」を課題に選びました。
そのイノベーションが「なぜ必要か」を考える
- 課題に取り組む中で、苦労した点や印象に残っていることは?
小森 「記録システムを作ろうと思います」と発表したところ、先生に「システムだけがゴールではない」と言われて、迷ってしまいました。
先生の話を聞きながら「なんで私たちはシステムを作りたいんだろう」と、かなり考えました。
岩下 3人でたくさん書き出しました。
「私たちはなぜシステムを作りたい?」「効率化?」「なぜ効率化したい?」「効率化するとどう良くなる?」という感じで、「なぜ?」を繰り返しながら、どんどん深掘りしていきました。
深掘りしていくことで改めて気づいたのが、スタッフさんたちが「大切なケアの合間を縫って記入している」こと。本来なら、利用者様と触れ合う時間だったり、ケアの質向上のための情報共有や交流の時間だったり、スタッフ自身が心に余裕が持てる時間だったり…。そうした時間になるはずの時間が、記録や転記に追われていたんです。
そこで「やりがいにつながる時間をつくるためにシステムは必要」という結論に至りました。
小森 ただ効率化をするのではなく、現場に寄り添った形で、「やりがいにつながる時間をつくる」ためにシステムをつくろう!と意見がまとまりました。
この話し合いを経て『ケア向上のため「やりがい」を実感できる時間をつくる、記録?転記システム開発』と課題を再設定しました。
北川 この段階で最終的な目標に辿り着けたおかげで、そこから先は割とスムーズに進みました。迷うことがあったときに「それはやりがいにつながる時間をつくることになってる?」と立ち返ることができたからだと思います。
- システム開発は、どのように進めていったのですか。
岩下 介護スタッフは年齢層が広く、比較的年齢の高いスタッフも多いため、そもそもシステム化に対する抵抗感があることも大きな懸念点でした。
もちろん、既存の福祉?介護系のシステムもいろいろ見ましたが、一番欲しい機能がなかったり、機能がたくさんありすぎて操作する際に迷ってしまったり…。
そこで、既存の記入用紙の項目のまま、シンプルなシステムを1から作った方が、現場の混乱が少ないのでは?と考えました。
北川 そこから3人でアイデアスケッチを起こして、figmaでプロトタイプを作成しました。本当に必要な項目のみのシンプルな構成で、タップのみで操作ができるように考えました。
バリデーション※1 では、そのプロトタイプを一度現場のスタッフに触ってもらい、意見をいただきました。
小森 操作の理解度やスムーズさはもちろん、ちょっとした手の動きを見るために、操作をしているところの動画を撮影しました。その動画を何度も見ながら、手が動かしやすいようにボタンの位置なども改善しました。
ここでは、演習プログラムの観察の経験が生きたと思います。
北川 システム会社さんにもバリデーションに同席していただき、その後システムの試作をお願いしました。
システム会社さんからは「プロトタイプがあるおかげで、どんなことがやりたいのかがわかって作業が進めやすかった」と言っていただけました。
岩下 現在、本格導入に向けて動いています。
まずは今回協力してもらった施設で試験導入し、ゆくゆくは全ての事業所ごとにカスタマイズしながら、慎重に導入して行きたいと思っています。
北川 「システム導入による作業効率の向上」が目的であれば、全ての事業所で共通で使えるシステムを入れるだけでいいですが、我々の目的はそこではありません。
「やりがいを実感できる時間をつくる」ことが目的なので、システム導入で混乱が起きたり、残業が増えてしまっては本末転倒。事業所ごとに要望を聞きながら、本当にその施設が望むシステムを入れて行けたら理想です。
3人で協力し、経験を積んでゴールへ
- 岐阜イノベーション工房を振り返って、いかがでしたか?
小森 「イノベーション」が、参加前はあまり理解できていなかったんですよね。IAMASさんが主催されているのもあって、IT系の先進的なこと?みたいな印象がありました。
でも実際に参加してみて、イノベーションはもっと身近な存在でした。
自分の業務の一部に新しいアイデアをうまくくっつけて、そこから新しい別の何かが生み出せれば、それはきっとイノベーションなんだと思います。
北川 あとは、この3人でよかったというのもありますね。
1人で黙々と考えていてもアイデアに限界があるし、ここまでできなかったと思う。
3人いれば、アイデアを掛け合わせることもできるので。
小森 確かに。1人だと、自分の窓の中でしか考えられないけれど、3人いれば別々の3つの窓があって、「おっ!そっちから来ましたか」みたいな、思わぬアイデアが出たりとか。
とても新鮮でした。
岩下 聞いているだけではなかなか自分の中に落とし込めないことも、かなり実践的に進んでいくプログラムだったので、経験として身についた気がします。
実際にやってみて、失敗して、指摘されて…そこからまたみんなで考えていくのが、大変でしたが、とてもいい経験になりました。
インタビュアー:後藤麻衣子(COMULA)
※1 バリデーション(validation)
自分たちがつくろうとしているプロダクト(製品?サービス)に、その対象となる人々が本当に価値を感じるかどうかを確認する手法。過去の延長線上で改善する場合とは異なり、自分たちにとって新規な領域で取り組む場合には、前提となる要件?要求定義などが間違っていることが多々ある。バリデーションでは、対象となる人々にとって重要な部分に限定したプロトタイプを素早くつくり、実際に試してもらうことにより、自分たちが正しいプロダクトをつくろうとしているかどうかを早期に確認する。これにより、間違ったプロダクトに対して大きな投資をしてしまうリスクを最小化できる。
「岐阜イノベーション工房2021」の参加者を募集しています。Webをご確認の上お申し込みください。
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(締切:2021年7月2日(金)17:00)