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「イアマス?リンギング」の舞台裏

伊村靖子(欧洲杯比赛投注_欧洲杯外围app-竞猜|官网[IAMAS]准教授)

2021年4月6日、入学式において第19代リンガーズによって「イアマス?リンギング」が執り行われた。

イアマス?リンギングは、欧洲杯比赛投注_欧洲杯外围app-竞猜|官网(IAMAS)の入学式?卒業式に、在学生によってハンドベルを使って演奏されてきた演目である。8人が円形になって演奏し、それぞれの演奏者に「0」と「1」の状態(前の人の肩をたたく/ベルを鳴らす)が割り振られ、演奏者は自分の背後の人の状態と自分がおかれている状態の数を足し算して「1」ならばベルを鳴らすというルールで作曲された、三輪眞弘の「逆シミュレーション音楽」のうちの一作である。

 さて、今年の演奏についてひと言述べておきたい。というのも、2005年以来、各演奏者が次の学年の在学生に個別に声をかけ、受け継がれてきたリンギングであるが、昨年途絶えたのを機に、新たに再演を試みたからである。楽譜ではなく指示書をもとに演奏されるこの音楽では、演奏者の解釈に委ねられる面がある。たとえば、演奏のテンポやタイミングの合わせ方、ベルの鳴らし方、服装などに関して、リンガーズの解釈、発案によるパフォーマンス性が発揮されるのだ。卒業式の前にメンバーを結成し、COVID-19対策を背景にオンラインでの演奏の可能性も検討されたが、最終的にマスクと手袋を着用したスタイルで生演奏することとした。


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 卒業式での演奏を経て行われたミーティングの中で、メンバーの川田祐太郎から、演奏の進行をチェックする役目を設定してはどうかという提案があった。これは昨年、三輪が作曲した《鶏たちのための五芒星 ダンサー、6人のパフォーマーとガムラン?アンサンブルのための》の「悪魔」の配役に因んだ解釈でもある。指示書を今一度読み直すと、卒業式?入学式の開始と終了を知らせる銅鑼の演奏者が9番目のリンガーズとして定義されていることから、これを拡大解釈し、松村明莉がチェック役を担当した。リンガーズが演奏を間違った場合には、松村が合図をし、入学式の演奏でリーダーを務めた幅田悠斗が演奏を止め、最初から演奏するという進行を予め用意することにしたのだ。演奏者にとって、途中で演奏をやり直すことはあってはならないことだ。少なくとも、前提としてはそのはずだ。しかし、そのような機能を盛り込むことで、機械そのものと化すかのような演奏体験に余剰が生まれる。鑑賞者にとっては図らずも演奏手順を反芻する機会となる。(実際の演奏は無事成功)

 この曲のもうひとつの特徴は、入学式?卒業式という現実の儀式の中に挿入され、これからIAMASで学ぶ学生と送り出される学生が、演奏を通じて演算する身体を目の当たりにする一種の通過儀礼でもあるという点だろう。毎年形成される任意のグループではあるが、硬直しがちな儀式や制度の書き換え可能性について身をもって考え、共有する体験でもあるはずだ。

第19代リンガーズ
卒業式メンバー:赤迫瑠奈、天野真、石田駿太、川田祐太郎、丹治圭蔵、徳毛郁哉、中南賢治、西田騎夕
入学式メンバー:幅田悠斗、天野真、川田祐太郎、丹治圭蔵、徳毛郁哉、中南賢治、西田騎夕、Peng Chia HUANG

銅鑼:松村明莉
司会:Kartika Mohandas MENON